「練習会に行ってみよう」のページでは、「まったくのノーマル車両でも参加できるのがジムカーナの良さだ」と書いた。
もちろんこれは事実だ。実際ほとんど全く改造が許されない時代も、かつて自動車競技界にはあったのだ。
しかし、市販状態のクルマと言うのは、あくまで「一般道を移動するための機械」として設計・製造されており、「より速く走る」ために存在していないことも一方では事実である。
こうして競技車両はそれぞれの競技専用に改造を施すようになるわけだが、ここで「公平性」と「安全性」と保つために作られたのが「国内競技車両規則」と言われるものである。
レースに使われるマシンやジムカーナ用のマシンなど、全ての競技車両が施していい改造部位をキチンと明文化している。
さて肝心のジムカーナにおける車両は、改造度合いによって以下の4種類に分けられる。
- 登録番号標付競技車両・N車両
- 登録番号標付競技車両・B車両
- スピードSA車両
- スピードSC車両
- スピードD車両
このうち登録番号標付競技車両・N車両およびB車両、SA車両は「ナンバー付き車両」、つまり法定車検に合致していなければならない。
一方SC・D車両は、それよりも多くの改造が出来る代わりに、ナンバーを切り、公道を走ることが許されない競技専用車となる。
実際のところ最初からSC・D車両でジムカーナをはじめる人は少なく、主流はN、SA車両及びB車両だ。
1996年まではかなり狭い改造範囲に限定されていた車両規則も、社会の流れに乗り次第に拡大されて来た。
2002年度までは、ナンバー付き車両の主流は「スピードA車両」と呼ばれ、2003年度以降の規則で言うところの「SA車両」に極めて近いものであったが、全日本選手権を中心に車両の改造・維持費の高騰を招いたため、2003年度からはより改造範囲を絞ったN車両が設定された。
SA車両は従来のA車両を当面使用できるようにするための暫定的車両区分。
B車両はこれらとは逆に、陸運局の車検に通れば何でもOKという車両だ。
これらの車両それぞれについて、詳細な規定を説明するのはとても難しい(^^ゞ。参考までに2004年度の競技車両規則の抜粋を挙げておく。
驚くほど細かい規定があって驚くかもしれない。
しかし、先に説明したように、車両の公平性を保つためには、これらの規則を理解した上で、それらに合致した車両で参加する必要がある。規則の内容や解釈に疑問があれば、JAFモータースポーツ局などに確認し、また、車検の際には自分のクルマが競技車両規則に合致していることを証明する義務が生じる。
公平性を保つということは非常に大変なのだ。
さて、最終的には選手各々が規則を読んで理解しなくてはいけないが、大まかなところを解説しよう。
重ねて言うが、詳細についてはショップ等に相談していただき、規則の厳密な解釈については、JAFモータースポーツ局に確認する必要がある。
- ■N車両
- マフラー、エキマニ、エアクリーナーボックス、インテークパイプ、ボンネット、トランク、バンパー、コンピューターの交換不可。エンジンの改造不可。
- クラッチは純正と容量変更不可、フライホイール変更不可。トランスミッションのギア比変更不可。
- 足回りはアッパーマウントも含めピロボールの使用は不可。ヘルパースプリングの使用は可。
- タイヤサイズはカタログ記載サイズより幅10ミリ、サイズ1インチアップまでのサイズ規制あり。
- 最低重量はカタログ重量−(ガソリンタンク容量×1.73)までの重量規制あり。
- ■SA車両
-
- コンピューター交換不可。エンジン改造不可。
- 足回りはヘルパースプリング使用可。
- タイヤサイズはカタログ記載サイズより幅10ミリ、サイズ1インチアップまでのサイズ規制あり。
- 重量規制あり。
- ■B車両
- 陸運局での法定車検に合致している車両。
- ■SC車両
- 2002年までのC車両。ナンバーを切り、積載して運ばなくてはならない。
- 改造規定は多岐に渡るため省略(^^ゞ。
- スリックタイヤの装着が不可となり、Sタイヤのみ。ただしサイズ規制はない。タイヤのウォームアップも禁止。
- ■D車両
- 安全規定さえ満たしていれば、改造はほぼ無制限の車両。一からシャーシを製作することも可。当然ナンバーなし。スリックタイヤ装着・ウォームアップ可。
こうして見るとN車両はコスト抑制という点では極めて中途ハンパな改造規定であり、おまけに重量規制はともかくタイヤサイズ規制により、純正サイズが小さ目の車両は、それだけでポテンシャルを失ってしまうという実に理不尽な車両規定となっている。
また、2002年までのA車両規定に合致させた車両を所有する大半の選手は、N車両に合致させるためデチューンに余計な費用をかけるか、車両を買い換えなければならないという事態に追い込まれた。昨今の不況期におけるかような大改正は多くの選手に混乱を生んでいる。
全日本選手権は、ナンバー付き車両としてはN車両に主流が移りつつあるが、地方選手権以下、特に都県戦では、逆にB車両中心のクラスが浸透するなど、大きく様相が変わっている。
さて、ジムカーナではこれらの車両別に、排気量別に車両の区分が分けられ、基本的にはこれらのクラス毎に競うことになる。
地区戦・全日本選手権については、JAFの規定により以下のようなクラス区分が設定されているが、それ以下のイベントについては規定はなく、シリーズによって自由に決定することが出来る。
クラス名 |
条件 |
N1クラス |
排気量1,000cc以下の2輪駆動・4輪駆動のN車両 |
N2クラス |
排気量1,000cc超の前輪駆動のN車両 |
N3クラス |
排気量1,000cc超の後輪駆動のN車両 |
N4クラス |
1,000cc超の4輪駆動のN車両 |
S1クラス |
1,600cc以下のS車両(SA,SC) |
S2クラス |
1,600cc超の2輪駆動のS車両(SA,SC) |
S3クラス |
1,600cc超の4輪駆動のS車両(SA,SC) |
Dクラス |
排気量区分なし |
これらはあくまで「全日本・地区戦」用のクラス区分なので、実際のところ、例えば関東では、JMRC関東および傘下の各都県はそれぞれ独自のクラス区分を設定している。
例えば、JMRC千葉ジムカーナシリーズの2003年クラス区分は以下のようになっている。
クラス名 |
条件 |
N2クラス |
2輪駆動のN車両 |
N4クラス |
4輪駆動のN車両 |
B2クラス |
1600cc以下の2輪駆動のB車両 |
B2クラス |
1600cc超の2輪駆動のB車両 |
B2クラス |
4輪駆動のB車両 |
BNT2クラス |
2輪駆動のノーマルタイヤによるB車両 |
BNT4クラス |
4輪駆動のノーマルタイヤによるB車両 |
BLクラス |
女性ドライバーによるB車両 |
Dクラス |
D車両 |
このように、各シリーズで参加者のためにいろいろと工夫しているのである。
特に都県戦は、今までジムカーナをやったことのない人が参加しやすいように、タイヤサイズや重量その他複雑な改造規定を気にしなくて済む「B車両」をメインに据えるところが多くなって来た。
確かにB車両ではともすると“改造競争”となり、A車両よりも車両製作・維持の高騰化が懸念されるが、ジムカーナは最終的には腕の勝負で決まる要素が多く、加えて間口を広げる方がジムカーナ全体にとっては有用であるとの認識に基づいている。