前項でも述べているが、コース図と言うのはあくまで「概略図」でしかない。
あくまで通る「順路」を示しているだけであって、憶えなければならないのは、自分の目の前にあるコースである。
したがって、コース図と言うのは憶えてしまえば必要がない。
よくコース図をクルマの中に貼っている人がいる。
まぁこれはお守り程度で、実際に見ながら走っている人はいないと思うのだが、しかし走行中に貼ってあるコース図を見なければならない事態に陥った瞬間に、勝負からは脱落することを意味している。したがって、これはまったく意味がない。
ミスコースが多い人の話を色々聞いてみると、浮かび上がってくる原因はけっこう共通している。
つまり「平面図であるコース図」を、「3次元で見える景色」に変換できていないのだ。
また仮に、ある程度3次元への変換が出来ている場合でも、パイロンを中心とした「静止画像」を積み重ねて行く手法によっている人が多い。あるパイロンに来た時に見える景色、次のパイロンや他のパイロンとの位置関係などを、写真のように記録・・・いや記憶して行く方法である。
この方法は、次項に後述する「ライン」を想定通りにトレースして走っている分には、おそらくまったく問題がない。したがってこれでも充分といえる。この方法でも立派にコースを走りきれる人はいる。
しかし、大きな欠点が一つある。ひとつのターンを忘れてしまったり、クルマの挙動の乱れによって大きくラインが乱れたりして、パイロンを想定した角度から見られない場合には、以後の組み立てがバラバラになってミスコースを誘発する可能性が高いのだ。
つまり、コース全部をひとつのものとして捉えられないので、どこかが途切れてしまうと後が続かないのである。
これを防ぐためには、コースを「動画」として「録画」する、という方法が有効であると考えている。
まるでオンボードカメラで撮影したように、映像を頭の中で作ってしまうのである。
スタートからゴールまでの映像を、完全に頭に「録画」してしまうことにより、自分がこれから行うべき運転のシミュレーションが可能となる。運転席から見える映像をトレースするのだから、そのイメージが間違っていない限り、走り始めても同じ景色が見える。
したがってミスコースしにくい。
筆者の場合、こうして記憶に録画した映像をもとに、今度はこれを「3次元グラフィックス」に作り直すイメージで記憶する。
つまり、コンピューターグラフィックスのように、仮想のコースを頭の中で構成してしまうのである。
こうすると、コースをありとあらゆる角度から見ても、自分の位置をシミュレーションすることが出来る。スピンをしようが大きくラインを乱そうが、その時に見えるであろう景色も「見える」のだ。
さらにこの方法のメリットは、自分のクルマの動きを、外から見つめるシミュレーションすら可能なことである。実際には、自分ができる運転と、自分のクルマの挙動を正確に把握することが前提なのだが、こうした方法もある・・・ということは参考にするといいだろう。