[2003/11/20]ゴメンナサイ

16日の関フェス以来、世間−−−といってもほんの一部だけど−−−の宸襟(しんきん)を騒がせ奉ってきた、「B車両の大量失格事件」について、ナマの話が聞きたくて、『JMRC関東ジムカーナ部会』に行って来た。

ここで、僕が18日に執筆したコラム『無粋な泥船。』及び、その中で使用されている用語の誤解を解説した昨日の訂正コラム両方を含め、「誤解」どころではない、完全な『事実誤認』のあることが判った。
そこで、僕が見聞したことを出来るだけ詳しく記述し、事実の正確な把握が行われるよう追加のコラムを執筆し、もって関係者各位への謝罪としたい。

あらかじめ断わっておくが、ここに記述する内容の文責は筆者にあり、もし事実と異なることが書かれているとすれば、それはすべて筆者の誤解である。また、このコラムはなんらJMRC関東ジムカーナ部会の公式文書ではない。これを了解した上でお読みいただきたい。

なお、『無粋な泥船。』および訂正コラムは、冒頭に注意書きを加える形で、そのまま掲載しつづけることとしたい。これは僕自身の「恥」の部分であり、これを晒しつづけることが自らの戒めになると考えるからだ。

さて、件の関フェス以来、ネット内外問わず、この大量失格の話題で持ちきりである。
まずは、噂話も含め、僕が聞いた「意見」「批判」「誤解」の骨子を羅列してみると、以下のようになる。

1.「失格」の裁定を下すのは「技術委員長」である。
2.JMRC神奈川主幹であるハズの関フェスに、東京チームの技術委員会が「俺達にやらせろ」と乗り込んできた。
3.それは、車重制限を越えたB車両がたくさんいることを予見して、再車検で落とす目的を持っていたからだ。
4.そのために車重計を準備し、根拠となる資料をカンペキに準備して臨んでいた。
5・JMRC関東や当日の技術委員会は、B車が賑わっているのを妬んで、わざと失格に追いこんだ。
6・JMRC関東や当日の技術委員会は、県部会の努力をまったく無視している。
7.当日表彰式前に行われた技術委員長の「お説教」に腹が立った。落した上にお説教とは何様か。
8.さらにエントラントの質問に答えていた「東京ジムカーナ部会長」氏の、「アンタのところの部会長が悪い」発言には怒りを覚えた。

9.なぜ関フェスでやる必要があったのか。
10.失格にする前にやるべきことはすべて手を打ったのか。充分に周知出来ていたのか。

こんなところだろうか。

前置きが長くなってしまったが、これらの前提を整理して置いた上で、さっそくJMRC関東ジムカーナ部会で見聞した内容を記述してみたいと思う。
なお、個人名を公開する許可はまったく得ていないので、登場する関係者は、役職以外すべて無作為なアルファベットで記載することとする。

そもそも僕がJMRC関東ジムカーナ部会(以下関東部会)に出席してみようと思ったキッカケは、19日の朝に受け取った、当日のアナウンサーAくんからのメールにあった。
彼は当日、正式結果が出るまでの空白の時間に、エントラントに的確な情報を提供できなかったことを非常に悔やんでいた。彼の立場で知り得ることなど実際にはほとんどなく、これはやむを得ないことだったのだが、責任感の強い彼は、広まって行く誤解を見聞きするにつれ、いても立ってもいられなくなった。

そこで、当日の技術委員長であるB氏に直接電話をして事実関係を聞くという、勇気ある行動を取ったのである。
僕が受け取ったのは、彼がそこで聞いた事実をわざわざ記してくれたメールだったのだ(もちろんここで言う事実とは、B氏の権限の範囲内で言えることだけである)。

僕はそれを読んで驚愕した。
前日の夕方に『無粋な泥船。』を公開したばかりだったのだが、そこで主張した論旨の、そもそも『前提』が間違っていることが判ったからである。

正直、これはマズイと思った。

同時にこれは直接話をしないと大変なことになる。
というより、直接話をすれば、おそらくすんなり誤解は解けるだろうと直感した。
そこで、僕は急いで、毎回関東部会に出席している千葉ジムカーナ副部会長のCさんに連絡を取り、彼の導きで関東部会に出席したのである。
この時、千葉代表として選抜され、やはりS1クラスで失格となってしまったDくんも、一緒に出席することになった。

東京タワーのふもとのビルの、そう大きくない会議室で、関東部会は行われていた。
会場には、当日の技術委員長B氏と技術委員F氏、発言があったJMRC関東副部会長/東京ジムカーナ部会長G氏の姿があった。
実際には既定の議題がぎっしりあって、「その話題」に入れたのは会場の都合で決まっている終了時刻、すなわち21時間際だった。
僕の手元には、「JMRC群馬ジムカーナ部会長」から、関東部会長に宛てられた「質問状」が配られていた。埼玉群馬のエントラントから寄せられた疑問を総括するかたちで提出されており、その行動の早さには脱帽した。

ここで、当日の技術委員長B氏の発言があった。
B氏は今回の失格の波紋が、予想外に大きく広がっており、それが一部チームや関東部会への不信感にまでつながってしまったことに心を痛めていた。しかし、その多くはB氏の知る『真実』とはかけ離れた『誤解』に基づいているように思われるので、ぜひとも詳細を説明したいというものであった。

ここでB氏の口から聞いた内容は、アナウンサーAくんからのメールとまったく相違のないものだ。

その内容の要旨を箇条書きにして以下に記す。


■主催者Hからの依頼で、『技術委員長』を務めた。
■都県戦で重量測定していない/出来ないことは知っていたので、せっかく関東部会が車重計(コーナーウェイトゲージ)を持っているのだから、自分のクルマの重量を知ってもらうサービス的意味合いもあって、これを用意した。
■計測した重量によってあらぬ噂が流れぬよう(例えば、誰のクルマはこ〜んなに軽かった、など)、再車検は技術委員のみによって行った。この方法自体はオンルールであると考えている。
■実際に計測して見ると、想像以上に軽いクルマが続出し、非常に困惑した。なぜなら車検証記載重量よりも異常に軽い車両さえいたからだ。
■これは明らかに「保安基準に適合する」状態に誤解があると思った。そこで自分もうろ覚えだった法律根拠を明確にするため、ここで初めてツテを頼んで「依命通達」をFAXで取り寄せた。
■技術委員長権限で合格とするにはあまりに大きい逸脱状態だったので、良心に従い審査委員会に諮ることを決定した。
■対象となった選手には、各人の測定重量を確認してもらった上、これに相違ない旨を記述した書類に署名をしてもらい、これを持って競技長I氏に提出した。
■この時に、今後における注意徹底の意味も含み、氏名と車重を公表することとしてはどうかと、個人的意見を申し添えた。
■ここが誤解の多い点なのだが、技術委員長は車検の結果を審査委員長に報告するという権限しかない。したがって断じて自分が失格を下したわけではなく、またそれを提案したわけでもない(※)。
■しかし、次に競技長I氏から連絡を受けた時には、審査委員会にて『失格』が確定していた(※)。
■フェスティバルという場でもあるし、審査委員会に対しては寛大な処分(戒告など)をするよう要請したが、「車両違反はモータースポーツにおいてもっとも重大な違反のひとつだから、これを許容することは不可能」ということで、覆ることはなかった(※)。
■対象エントラントからも意見を浴び、多くのエントラントの時間を費やしてしまった上動揺も招いたので、これは詳細を説明する必要があると考えた。
■この旨を審査委員会に諮ると、「審査委員会が大会講評で失格理由について述べることはない。ただし、表彰式の前の公式行事でない時に、個人的談話として説明するのであれば問題はない。」ということになった。
■これによってあの表彰式の前の「ご説明」に至っている。
■しかしこれが、さらなる誤解を生んでしまったので、それが非常に残念だ。

※国内競技規則によると、失格の裁定を下す決定権者は「競技長」であり、技術委員長の車検結果等も本来提出されるべきなのは競技長である。「審査委員会」はこの競技長の決定に対して、それがオンルールであるかを「審査」する機関であり、積極的に失格にする権限を有しない。この点については、B氏および主催者H、競技長I氏の誤解がある可能性もあるので、その点注意して理解してもらいたい。

《訂正追記》
上記「※」は正確ではないようだ。失格の決定権者はやはり「審査委員長」であること判った。少なくとも「競技長」に失格の決定権はない。勉強が足らない。ゴメンナサイ。


というものである。

さらに関東部会副部会長/東京ジムカーナ部会長G氏も、「関東部会では以前から言及している。東京部会では周知しているから、知らないのはあなたが所属する部会の部会長が悪い。」という発言が批判を呼んでいることについて、以下のようなコメントとともに遺憾の意が表明された。

●いわゆる「ナンバー付き競技車両」に対する取扱いについては、97年に大きく車両規則が変わった際に関東部会で詳細に話し合われた記録があり、関東部会に出席している部会長であればこれを承知していると考えた。
●当時の「ナンバー付き」と現在の「B車両」の定義は何ら変わっておらず、そうであれば当然以前の取扱いがそのまま生きているものと考えていた。
●したがって各部会で充分周知されているものと信じていたので、質問に立ったエントラントが「聞いたことがない。知らない。」と発言したことについて、非常に違和感が強く、あの発言に至った。
●しかしB車両規定となってから、その取扱いを詳細に話し合ったわけではない、というのは事実である。
●今回は、主催者側の内部事情に巻きこまれて非常に不快な思いが連続したさなかだったので、自分としても
口調に問題があったのは認め、遺憾に思う。

というものだ。

どうだろう。
これを読んで、上記の「1.〜10.」が憤慨の対象として適当なものだと、まだ考えるだろうか。
特に「1.〜6.」に至っては、まったく誤りである。

少なくとも、僕は自分が展開して来た批判が、まったく的外れに思えてしまった。
つまり、技術委員長B氏も技術委員F氏も、積極的に失格にしようとした事実はまったくなく、それどころか最終的な批判を浴びる「矢面」に、まんまと立たされてしまった結果が「7.」である。
G氏にしても、「8.」のように発言の内容自体は責められるべきものがあるが、他部会を軽視したものでも、東京部会を自慢したがったわけでもないことは、容易に見て取れる。

唯一問題があるとすれば「10.」だろう。これはたしかに充分とはいえなかった。

このB氏の発言を、それでも「自己弁護のための言い訳だだろう」というのであれば、それは論理的思考を超えた、単なる「好き嫌い」の問題であろう。少なくともそこまで勘ぐって疑うのであれば、一度でいいから直接話を聞くのが筋かと思う。

これらの話によって、当事者として憤まんやるかたし、珍しく怒りに打ち震えていたDくんも、胸のつっかえが取れたように晴れ晴れした表情をしていた。
自分があの場所で、被ることになった失格という不名誉を、最終的に下したのは誰なのか。
『無粋』で『下衆』の極み、あの大会のすべてを『台無し』にしたのは誰なのか。
その答えを知ったからである。

実にあっけない。
当日200人ものエントラントが怒り、呆れたあの事件は、我々の目に見えたところに真実はなかったのだ。

そう。

つまり、今回の件に対する批判・意見の大半は、最初から向けるべき矛先が間違っていたのだ。
中には誤解も極まって「悪いのは主催者ではなく、意図を持って失格に追いこんだ技術委員長だ。」とまで言う人がいたが、これはまったくの誤りなのである。

すなわち、関東フェスティバルという、
都県戦を戦いぬいた選手が、
都県を代表して選抜され競う、
実に楽しいハズのお祭り的イベントを、

『台無し』にした、
『無粋』で
『下衆』な首謀者は、

あの主催者及び競技長である

これは非常に重要な認識変更だ。

しかし、この主催者を代表する競技長は、今回の関東部会にも報告にすら来ていなかった。
それどころか大会当日でさえ、結局審査委員長の講評も、主催者代表としての挨拶も、結局何も行われずじまいだったのである。それゆえに、B氏の「ご説明」が唯一「もっとも公式らしい」形に見えてしまったので、ますますB氏に批判が集中する結果となったのだ。

これは別の情報筋から聞いている話だが、今回のフェスティバルは、本来主幹としてJMRC神奈川ジムカーナ部会があるハズが、とある事情により、今回の主催者Hが単独開催することになってしまっていた。これは本来あってはならないことなのだが、とにかくJMRC神奈川ジムカーナ部会の関われる余地がほとんどない状態になっていた。
神奈川主幹のイベントとして行われていれば、大会報告なども神奈川部会長が行えば済む話だが、今回については事情が違う。

だから主催者Hが部会に来てしっかり大会の報告する必要があり、そうでなければ本来的にはなんの真実解明にはならないのである。
批判・意見の矛先が、誤解に基づいた技術委員長B氏から主催者Hに、正しく向き直すことができたとしても、失格連発という状況を作り、多くのエントラントに怒りと不安と失望と疑心暗鬼を与えた大会に至らしめるべく、決断を発した人間から、なんら言葉を引出していない。

さらに言うと、僕としては、解釈のしかたによっては、あの「失格裁定」そのものがオンルールでなかった、という可能性が残されていると考えている。
なぜなら、国内競技車両規則第2編 登録番号標付競技車両共通規定、第1章ならびに第5章に定義されているB車両は、車両が保安基準等の法規に適合しているかの判断自体を、しかるべき公共機関(この場合陸運局)に委ねていると考えられるからだ。
仮に測定値が公表されている基準から逸脱していたとしても、それが「適合」しているかしていないか、すなわちそのクルマの車検証が無効であると判断出来る権限は、陸運局の車検員でもない人間にあるはずがないのだ。

今回の件についても、車検証より車重が大幅に軽いのがたしかに『事実』だとしても、それは車検に通らない「可能性」を示しているだけであり、現に車検に通らないと判断することは出来ないはずなのである。知りたきゃ陸事に持って行くしかないのだ。

聞いている話によれば、今回の主催者は来年以降「JMRC」と名のつくイベントを開催しない方針らしい。
それゆえ、言い方が非常に汚くて恐縮だが「最後っ屁」をふっかけてトンヅラした、という揶揄さえ聞かれているのである。
主催者Hならびに競技長I氏は、エントラントから向けられるすべての「なぜ」に、真摯に応える必要があるのではないだろうか。

そして関東部会は、今回の主催クラブによりまねかれた、エントラントの間の重大な不信感を、積極的に払拭する努力を図る必要があると思う。
それは徹底的な情報公開と、出来る限りの広報、そしてなによりも、JMRCがエントラントのための組織であることを、あらためて強く認識し直すことによってのみ、可能になると思う。特に上記「10.」つまり、ルールの不徹底などは、やはり最終的な責任はJMRC関東自身に帰するのだから。
まったく「泣けるぜ・・・(ダーティ・ハリー風)」な置き土産である。



余談だが、関東部会終了後、僕は今回僕自身が事実誤認に基づく批判の対象とした、技術委員長B氏ならびに技術委員長F氏、関東副部会長G氏に声をかけさせていただき、自分の認識に誤りがあったことをお詫びした。
各氏とも、あれだけ好き勝手に批判の先鋒を務めた僕を、寛大に遇してくださったことをここに申し添える。

関東部会は、僕が力を入れている千葉ジムカーナ部会とはちがい、各都県の声を集め利害を調整しなければならない大きな役目を帯びており、さらに上からは直接JAFの重圧を感じ、僕らが千葉でやるように身軽には動かないことがよく分かった。
しかしながら、僕の目から見ると明らかに欠如している視点や、改善余地が多々あるように思う。
でも、そうした点が残されている最大の要因は、エントラントの無関心であると僕は感じた。
ことが起きた時にだけブーブー騒ぐが、普段は「ボク走る人」に徹してしまっている人が多過ぎる。そういう人に限って「どうせ何を行ったって変わらない」と、最初から行動することを放棄している。

まずは都県部会でもいいから、ちゃんと公式の場で、自分の発言に自信と責任を持って、意見があるなら表明するといい。でも、ゲームじゃないんだからすぐに結果が出るわけもない。人に説明し納得させ、人を動かして行く努力をした人のみが、自分の思いを実現することができるのだ。
直接関東部会に乗りこんで行っても僕は一向に構わないと思う。
別にそれでライセンスが剥奪されるわけじゃない。意見は表明しなければ意見にならない。
意見を行っても変わらない部会なら、そんときゃ全力で潰しにいくか、とっとと見捨てればいいだけの話だ。


さてその後、追い出された会場ビルの外で、キレイにライトアップされた東京タワーを見上げながら、怪しいおじさんたちが輪になって談笑していたそうな。

そのあと食った、三田のがんこラーメンの味は、いつもにも増してまた格別に感じられた。
あー旨かった。


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